ある夏の海で


こんばんは。
最近の休日はダイビング三昧の横山です。

今日は、私が毎年思い出す『海』で感動した時の事をお話ししたいと思います。

ある年の夏、
知り合いのダイビングショップのインストラクターから連絡が来ました。「通常ゲストの他に団体の体験申し込みが入ったんで、手伝って貰えないかな。」と。

聞けば、その団体は
訳あって親御さんの元から離れて暮らす、養護施設の子供達とその職員さんだそうで、子供達の為に施設が企画した「夏休み旅行」のイベントの1つだとか。

それを聞いた時、
「家族で夏休み旅行」は当たり前じゃ無いんだな….
と、恥ずかしくも気づかされました。

そして、施設の意向は「子供達の思い出作り」だと感じ、是非とも協力したくて、二つ返事で受けました。(勿論、ノーギャランティです)

当日は、施設の子供達だけで無く、学生グループや家族連れも参加。その方達をグループ分けしてインストラクター毎に割り振りされます。
私のグループは施設の職員さんと子供達半分と親子組。
……ん?
私は、親御さんと離れて暮らす子供達と親子組を一緒にはしないだろうと思っていたので、「もっと気を遣ってよぉ」とちょっと違和感がありました。
ですが、「この子達にとって、こんな事にこそ耐性と許容性を強く持った方が良いんだろうな。」と考え直し、「よっしゃ!み~んなまとめて笑顔にしちゃうぞ!!」と気合いを入れたのでした。

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ワクワクとドキドキな体験ダイビング。
午前中はシュノーケリングで海になれ、午後はいよいよ器材を背負ってエントリー。なのですが、
初めての経験な為、
シュノーケリングの時点で、海に顔をつけられない人や、
緊張する人、怖さに耐えている人などがおりまして、
その方達をどのように海中に導くのかが、イントラの器量にかかっているのです。楽しい思い出になるか恐怖の思い出になるかの分かれ道です。

私のチームの施設の子供達は、
Aちゃん/しっかり者なお姉さんでいつもクール
Bちゃん/明るくパワフルでひやかし好きな若干お調子者
Cちゃん/華奢でみんなに調子を合わせる曖昧型
Dちゃん/物静かで運動がちょっと苦手だけど明るい子
Eくん/ムードメーカーで常に笑ってしゃべる元気な子

いよいよ海に潜る時、
窮屈なウエットスーツに重くて謎な初めての器材。
誰もが、初めての海中に好奇心より恐怖心の方が上回ります。

なので、午前中とは違ってなかならスムーズには行きません。

そんな中、
Aちゃんは、怖いと言えない。
Bちゃんは、恐怖を誤魔化して本心を言わない
Cちゃんは、感情すらバディに合わせちゃう
Dちゃんは、誰よりも怖がっているけど怖いとは言わない
E君は、震えているけど身を任せて大成功!

これまで沢山の子供達と潜ったけれど、この子達ほど『感情を伝えてくれない』子達は居ない。
なんで?それが分からないと海に潜らせてあげられない。
なぜなんだ!?
その時気づきました。この子達は、
『大人に甘え慣れてない』 『感情をおさえがち』『我慢する』
といったが事が染みこんでいるんだなぁと。
ならば、今はそれをしなくて良いんだと伝えるべきだと。

で、それぞれに
「海に潜るっていうのは偉大な自然相手の事。だから常に無理は禁物。怖いは怖い、強がったりふざけちゃいけないの!今の感情をちゃんと言って貰えれば、お手伝いできるよ!」と話し、
A~Cちゃんは、アドバイス通りにやってくれて無事海中に。
ですが、海面に顔すら付けられず、誰よりも怖がっていたDちゃんは、
流石に無理かと思い、
「どうする?怖かったら無理しなくて良いんだよ。止めとく?」
と聞くと、顔を振り頑張りたいと。
更に「今日は頑張って怖さに勝ちたいの。潜りたい!」
とボロボロ大粒の涙を流したんです。
その時、お調子者で感情をはぐらかしてばかりだったBちゃんが、
「ねぇ、私も怖いけど一緒にもう一回がんばろ!それでも怖くてダメだったら一緒に上がろうよ!!」と励ましたのです。

「あぁ、この子達はいつもこうして励まし合っているんだな。」って思ったら、
「そんな二人を、海中に連れて行ってあげない訳にはいかぬっ!!!!!」
と私も必死です。
「大丈夫だから、私を信じて!」とありったけの思いで、再トライ。
子供達二人でアイコンタクトを取りながら、二人で私を見る。
これを繰り返し、少しずつ海の中へ。
海の中で手を繋ぎ泳ぐ二人を見て、
思わず泣いちゃいました。
海の中で泣いたのは、後にも先にもその時だけ。
イントラ冥利に尽きる、1ダイブでした。

その後、海から上がって、
それぞれの性格をよく知る職員の方々に「1ダイブで色々な事を克服した子供達を褒めてあげて下さい。」と報告すると、泣いて喜んで頂けました。

そしてなんと、
解散前に子供達全員に呼ばれ、そこに立てと指示をされ戸惑う私に、担当した子供達一人一人が、自分を素直に表現できて嬉しかったし楽しかったとお礼を言ってくれ、
Dちゃんに至っては、「みんなと同じ思い出にしたかったから嬉しい」と。
最後は全員で声を揃えて「有り難うございました」と一礼され、またもや泣かされちゃいました。

今でも、忘れない大切な思い出。
子供達の良い思い出になっていると良いな。

毎年、海に行くと思い出します。

今年の夏、皆様に沢山の楽しい思い出が出来ますように☆